だらう。つまり科学的にはベストを尽して来てゐるんだ。それは僕が保証してあげてよろしい。治るものなら、これで治るんだよ。……駄目なものなら、もうこれ仕方がないんだな。
五郎 (ビクツと、小さく飛上るやうな動作)……。あなたには、そんな事が言へるんだ!
比企 なんだよ?……そりや、僕は医者だから、科学の命ずる事を言つてゐるまでなんだ。……そんな風に言ふのは君らしくないよ。
五郎 科学が命ずると言つたつて、では科学が本当はどんな事を命じてゐるんです? 全体、では、あなたは科学を信じてゐるのか。
比企 ハハ、そんな事聞いてどうするの? そりや、信じてゐるとも言へるし、信じてゐないとも言へるよ。でも科学のプロバビリテイだけは――と言ふよりも科学と言ふものが実はプロバビリテイを綜括したものだが、――そいつだけは信じてゐるよ。でなきや医者なんかやつて行けるもんぢや無いからね。だから、変な話だけど、医者と言ふものは病気を治したり出来るもんぢやないと思つてゐる。要するにそのプロバビリテイに基いて患者に対して忠告をしてあげる役目だけだな。
五郎 ぢや、そのプロバビリテイを信じられなくなつた者はどうすればい
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