病菌と戦つてゐる証拠なんだな、……それが無い、……つまり一種の脱落症状なんだ。
五郎 わかりました。……
比企 熱を出してくれりや、まだいゝんだけどね。……(話の間も手拭ひで水着の上から身体を拭いてゐたが、この時拭き終へて砂の上に置いてあつた浴衣を羽織る)……君も医学の本は随分読んだらしいし、それに、二年以来あれだけの病人に附きつきりで看病してゐるんだから、この病気に関しては何でもよく知つてゐるらしいから、隠したつてはじまらん。……やつぱり、かなり注意してゐる必要があるだらうなあ。
五郎 ……ありがたう。どうでせう、今の状態を切り抜けるために、病院に入れるとかサナトリウムに入れるといふのは?
比企 さあ、よした方がいゝでせう。
五郎 どうしてなんです?
比企 いや、金がかゝつて大変だ。設備のとゝのつたところでは、かなり取るからね。考へて見ると、結核なんて病気は立派な社会病で、社会全体に責任が有るんだし、しかもそれに依つて本当に苦しめられてゐるのは、勤労者に多いんだから、国家なり社会なりが、もつと安価に入院できるサナトリウムを、もつとウンと建てるべきなんだ。しかし差し当りの、現実問題とし
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