しぬけに今迄の子供らしい表情を失つて、右手で京子の肩を掴む)
京子 ……(おびえ切つた顔をして、ブルブル顫へている。急に此の女が無力に小さなものに、同時に何か柔かい女になつた様に見える)……痛い! 痛いわ、そんなに掴んぢや……。
五郎 ……。
京子 (シクシク泣き出す。痛いためでも悲しいためでも無いらしい)……。
五郎 ……ふつ!(相手の肩を掴んでゐた手を離す)
京子 (立つて居れなくなつてヘタヘタと坐つて涙を拭く)
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五郎はさうして暫く京子の姿を見てゐたが、やがて京子から眼を離して、次第に怒つたやうな顔になり、ジツと立つてゐる。
京子の涙は、何か訳のわからない甘いものである。静かに泣きやんで、砂の上を見てゐる。
間。
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比企 やあ、久我君も来てゐたね……(と言ひながら上手からやつて来る。海から上つて間がないと見えて、水着が濡れてゐる)……おゝ寒いや。もう駄目だね、海水浴も。……京子、何をしてゐるんだ。そんな所に坐つて?
京子 (ボンヤリしてゐる)……えゝ。
比企 どうしたんだい? 泳いで来いよ。あがつて来ると寒いけど、水の中に居りや丁
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