ト、右手を柴田のわきの下に入れて、両人力を合せて引上げる)
柴田 やあ、すまん。すまん。ふう!(息を切らしながら、穴のふちに坐って、肩や手足の泥を、穴の中にはたき落す。顔はむくんでいるが、からだがひどく痩せていて、自分の古背広を着ているのが、まるで倍も大きい人の借着をしているようにパクパクである)
せい (いっしょに泥を落してやりながら)チョットゆだんをすると、すぐに! また後で、熱を出したりなすったら、どうします?
柴田 (まだハアハア言いながら)なに、たいした事あない。
せい 先生はたいした事はなくっても、双葉さん、また、どんだけ心配なさるか――ちったあ、それ、考えておあげんならなきゃ、あなた――
柴田 はは、なにさ――
清水 なんでしたら、自分が埋めましょうか?
柴田 なあに、もうあらかた、埋めるにゃ埋めてある。あと二三本、根太の下を突きかためるだけだ。
せい ですからさ――
柴田 もともと、私が自分で掘ったものだからね。自分で埋めるのは当然だよ。はは、言わば自業自得だ。第一、床がブカブカして、歩くにも、寝ていてもグラグラする、コップはひっくり返る――(立とうとするが、うまく立て
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