なんとか他に方法は無いもんかねえ?
三平 そら始まった。
柴田 いやいや、私の言うのはだな――
三平 たいがいにしなさいよ、あなたも。ねえ誠君?(誠、答えず。うつむいて鉛筆を動かしている)そうでしょぅ? 生命をつないで行くために、人間がしちゃいけない事なんか、世の中に何一つ有りゃしませんよ。
柴田 しかし、どうせ闇屋などをしても、ホンの一時のことだろう。それよりも、なんとかこのチャンとした方針を立ててだなあ――
三平 人世、すべて、その一時でないことがありますかねえ。時にこうした有様の現在とあって見りゃ尚の事。昨日は夢の如く、明日はどうなり行くか、双葉じゃないがアラアの神も御存じなしです。チャンとした方針などが有り得ると考えることからして一つの妄想だねえ。強いて方針と言やあ、一刻々々と次々にどんなに奇妙な、どんな奇怪な事が起きてもですね、――たとえばアラフラ海の海底から四斗樽ほどの海蛇が出しぬけに此処へやって来て、一緒にダンスを踊りましょうと申し出てもだね、又、一時間もして不意に私がアモックにとっつかれて、そこの薪割りかなんかで兄さんをはじめあなた方全部を皆殺しにしてもですね、今更びっ
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