、腹がへるとベラベラと、とめどが無くなった。胃がからっぽになると頭が昂奮するのだなあ。食欲と言語中枢の関係か――
誠 ……その腹がへったを、双葉に、あまり聞かせないで下さいと言ってるんですよ。
三平 しかし、へったのは事実だからね。
誠 そうでなくても、双葉はいつも一人で気をもんでいるんですから――あんまりヤイヤイ言われると、又倒れます。
三平 うむ。……そりゃ、まあ、なんだよ……うむ。ええと、おせいさん、どこい行ったかね?
誠 人が来て、それと一緒に出かけたらしいですよ。
三平 人? じゃ、厨川の方から誰か?
誠 いや、大工さんの――板橋の家を建てた大工の内のおかみさん――どうせ金の催促でしょう。
三平 しつこいなあ、どうも。すっかり焼けて灰になってしまった物の代価を、はたり取られてる。いや今の日本は公私ともに、すべてそれかもしれんなあ。
誠 ……せい子さんの、厨川の方のこと、片附いたんですか?
三平 さあ、まだだろう。
誠 だろうって――人ごとのように言うなあ。
三平 だって君、私とおせいさんは関係が有るが、私と厨川君とは、なんの関係も無い。おせいさんの元の亭主が厨川君であると言う
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