ながら、しばらく黙っていてから、つとめて静かに)……そんなふうな考え方は、お父さんの国士気取りの哲学癖に過ぎないと思います。……明治維新以来の日本の歩みがどうであろうと今現に現実の問題としては、先刻言った――つまりイエスかノウの二つの立場しかないんです。その中間のどっちつかずのボンヤリした「国民的立場」なんて、実は存在しやしないんだ。われわれは自分が今立っている現実の関係に立って歴史を見る。好もうと好むまいと、意識しようとしまいと、そうです。問題はお父さんが、どんな立場に立っているかと言う事だけです。
せい (どうなるかと思う心配のために、ハラハラと唇まで顫わせていたのが、こらえきれずに誠の言葉をたち切って)もう、あなた、いいじゃありませんか!いいえ、私は、なんにも知らない人間ですけど、先生のお気持は、よくわかります。そんな、あなた! (小走りに炊事場へ行き、コップを取って水を注ぐ)
誠 (そのせい子の方をジロリと見てから、つとめて自分を押えながら)なるほど、それは良心的です。誠実だ。しかし良心的で誠実であるだけに尚いけない。それはどこにも規準を持っていない。奉仕すべきものを持っていな
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