紙で以てしようと志している事は、結局に於て、それである。乞う通読せよ)
 しかし、そうであればあるほど、われわれは、われわれの兄弟がその中心的意図や善意を達成して行くのに、どう考えても邪魔になると思われる矛盾、場合に依っては、その中心的意図や善意を遠からずして放棄せざるを得なくなるに至るべき素因となり得る矛盾を自らの裡に持っている事に気附いたならば、それを指摘してやるだけの無慈悲さを持たなければならないのだ。ましていわんや、君の文章を以てこれを見れば、君達はその種の矛盾を剋服しようとはしていないばかりで無しに、却ってそれらをより強く掻き抱こうとしているらしい事が察知されるに於ておやである。
「今の日本にこそ高い演劇が必要だ……そのために私たちは役立ちたい」と君は言う。これは大望だ。同時に至高の発願である。よし。たとえ、その大望その発願が達しられなくても、それは問うに足らぬ。ただそれに挺身躬行すること自体の中に、われわれ演劇人が総がかりになって精進するだけの光輝と価値が存する。だのに、君達は、それと同時に一人々々スタアであり続けようとする。稼業に暇が有る時だけ、それをやろうとする。いつな
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