よいよボヤボヤして居れなくなって来たと思い、わが友丸山定夫の素顔を近々と見る思いがして、君に対して僕が抱いて来た永い敬愛の念を新たにしたことである。
 僕の気持はうれしいと言うよりも、むしろ、ありがたいと言うに近かった。君の意見自身の是非のことではない。君のムキな態度のことである。君にこの様なムキさが失われて居ず、そしてこの様なムキさを君が持ちつづけて行ってくれるならば、それは、やがては君自身をも、それから僕をも、それからその他の演劇人達をも、より高い、より確乎とした境地へ引き上げてくれる事が出来ると思ったのだ。
 願わくば、このムキな態度を持ちつづけてくれ。逃避したり、はずしたり、詭弁に[#「詭弁に」は底本では「詭辨に」]陥ちたり、自嘲に堕したりしないでくれ。君は君の文章の中で「一つの劇団の活動は永続させることが何よりも大事だ」と言っているが、そしてそれは確かに真理であるがしかし今の場合、それよりも尚一層大事なことは君自身のこの様なムキな態度が永続してくれることだと僕は思う。

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 さて、僕は近来益々「言説」の無力さ無意味さを痛感する。よしんば、その言説がどの様に正し
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