え、マキ君、聞いてるか、俺の云うこと。
[#ここから3字下げ]
マキは、死灰のように目も開けない。
[#ここで字下げ終わり]
井上 ごらんの通りだ。もし、すこしでも元気が出たようだったら、いつでもいいから連れて来たまえ。どっちせ、今夜、またおそくなって、来るには来てみよう。
[#ここから3字下げ]
と云って医者は帰る。
その後で、シンとしてマキの姿を見守っている者たち。
[#ここで字下げ終わり]
豊後 おいマキちゃん。しっかりするんだよ!
岩見 ……しょうねえなあ、マキちゃんよ、おい!
[#ここから3字下げ]
マキは返事をしない。
そこへ、一番向うの隅つこの方から、だしぬけに、
「ヤーレ
破れわらじと
おいらの仲は」
一同がひょいと見ると、肥前。
[#ここで字下げ終わり]
陸前 肥前。どうしたんだ急に歌をうたって? 歌のだんじゃあないじゃないか。見ろ、マキちゃん死にそうだ。
[#ここから3字下げ]
それにかまわないで肥前、
「すぐに切れそで」
[#ここで字下げ終わり]
豊後 よせと云ったら!
[#ここから3字下げ]
どなる。そのあとシーンとした中にクスクス低い笑い
前へ
次へ
全40ページ中37ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング