るんだか何だかしらんけど……そこへ病気になったりしてよ。……気がついたら上野の地下道に寝てたってわけだ。……そうよなあ、全くマキベえの言う通り、もう死んでもいいようなもんだなあ。へへ……

[#ここから3字下げ]
出しぬけに直ぐ耳のそばで、川端のビール工場の午後のボーが、ウワーツと鳴り出して二人の話を消してしまう。
マキ子の病気が、ひどくなって、どっと寝こんでしまい、マキ子に好意を持っている連中が、意識不明になっているマキ子を遠まきにして見ている。この宿泊所の宿泊人達を気にかけている若い井上医師がやってきて、診察しおえて、何んとなく一同に向って、
[#ここで字下げ終わり]

井上 ふむ、病気そのものが、それ程ひどくなったというわけじゃないが、栄養が落ちていてなあ、これじゃ、肺病で死ななくても栄養不良で死ぬねえ。本人が生きようという気がもうないんだからどうにも医者に、手のつけようがないよ。当人がその気にさえなってくれりゃあうちの診療所に連れてって、どんどん栄養注射でもすればもち直すかもしれんがね。なにしろ、当人が一日も早く死んだ方がいいと思っているらしいからなあ。これじゃしょうがない。え
前へ 次へ
全40ページ中36ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング