おらが二十三。二十三の木こりが十八になった妹ばつれて山かせぎに出るちうのもおかしかけど、しょうねえ。俺にしたっておのしば、娘らしう裁縫やなんか習わせて、早うよか所へかたつけてやる仕事をさせんならんと思わんわけじゃなかばってん、俺とおのしは兄一人妹一人の二人っきりで、お父ちゃんもお母《か》しゃんも、ほかに兄弟もなかけんなあ、村の家におのし一人ば置いといて俺が山に入るわけにもゆかんき、こうして……
お花 あたしはお嫁になんか行かんばい。それに家で一人でいるよりゃ、こうしてあんやんと山で稼いでる方がズッといい。
健二 いや、俺の言うとるのは、人間なあ、誰でもうぬが生れついた境界ば忘れちゃならんちうこつたい。どうせ、俺たちゃ、山ん中で生れて山ん中で果つつ身分じゃけんねえ。
お花 あんやん、なんの事云いよるとかい?
健二 なにさ……仲蔵は、あいで、俺とは学校友達じゃし、おのしとも仲が良うて、そいで今はああして丸市製材の川師で働いとるが、もと/\あすこの親方の遠縁でな、行く行くは丸市の養子になるかもしれん男たい。俺たちたあ身分が違うさ。
お花 んだから、それがどうしたというのな?
健二 どうしたと
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