アッハハハハ、と二人が声を合せて笑う。

健二 そら、行くぞ、お花どいてろう……

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カーンと打ちこんだ音でヒノキの大木がベリベリベリ、ザザザーッと倒れる音。
妹が兄に近づいて行き、
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お花 こら、この汗だ、あんやん!

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兄の背中を拭いてやる。
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健二 (気持よさそうに)ふう! こいで丸市で入札したぶん、しめて十八本、すんだな? ここらで六平小父さんとこで昼めし食うか。
お花 落しの方へはこんどかんでも、いいか?
健二 うん、どうで仲が、筏くむ前に来るき、落しはひきうけたと云うとった。
お花 するちうと仲さんがここい来るちね?
健二 来ちゃ悪いっか? はは、さ行こ!
お花 うん……

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兄弟は下生えを踏みわけながら傾斜を沢の方へくだって行く。その音……
健二がフッと立ちどまって、
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健二 お花、おのしは、いくつになったか?
お花 え? なに?
健二 おのしゃ、いくつになった?
お花 あたしゃ、十八だ。なぜ、そんな事きくか?
健二 十八か。……
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