「やーれ」
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山で赤いのは、こら
つつじに椿
それにからまる藤の花
ああ、チートコ、パートコ
やーれ
遠くはなれて、こら
逢いたい時は
月が鏡になればよい
ああ、チートコ、パートコ」
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健二 相変らずのヘタクソじゃなあ、お花! おのしが唄うと、おれあ、向うずねばナタで叩つきるうごつある!
お花 あらあ、あんな事言うて……あたいの歌あ、こりでいいちうて、仲さんがほめてたのに……
健二 そんなら、後で六平の小父さんに唄うてもろうて、くらべて見ろ。仲は、ありゃ、おのしのすつこっあ、なんでんかんでん、よかきい。
お花 んなら、あんやん、唄うちみ。
健二 おりゃ、日田の山奥の木こりですばい……歌あ唄えんばってん、木を切りきりゃ、いいきのう……ヨッ、ホウ!
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カーンと立木を切る音。
一方お花はゴシゴシと、小のこぎりを使いながら、
それに合わせて、
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お花 「やーれ
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月の出しをと、こら
約束したが
月は山かげ、主あどこに
やれ、チートコ、パートコ」
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