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肥前 へつ、なにを言やあがる! へつ、何をツベコベと、きいたふうな事を言やあがるんでえ! 誰か思わん夢さめて――と言ってな、あれから二十何年とたつちまったんだ。今さらいくら思い返してみたって、どうにもこうにも取り返しがつくものけえ! へつ、くやしかったら、ばけて出て来て見ろい、およねしゃん!……
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ウントシヨ、とあがるトタンに又空きカンをガランガランと言わせてしまう。
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三河 (これはまじめに、低い声で)おい肥前さんよ、ホントに静かにしなよ。みんなもう寝てるしよ、それに第一、そっちの隅のマキちゃんが又からだの加減が悪いちって今夜も苦しがっていたのが、どうやらやっと落ちついたばかりの所だ。
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肥前はそれには答えず、鼻歌まじりにミシミシとみんなの枕元を通って自分の寝場所に行き、フトンを引きずり出して寝仕度にかかりながら自分だけは良い心持そうに――しかしはたから聞くとくずれさびれた投げやりな調子で――低い声で唄い出す。
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肥前「やーれ、月の出しをと、こら
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