えやがる。なあに、早く言ゃあバタヤの合ヤドじゃねえかよ。ゴネとるのは睡眠時間が来たからじゃなくって、起きてると腹がへるからでえ! ヘゲタレてんなあ、人権じゃなくて人間の方だろ!
陸前 いいから、静かにしろい! そういう量見だから、てめえだちゃ、ヘゲタレだあ! これで俺たちは一人びとりさんざん手傷を負ったケダモノみたいなもんですよ。毎日々々ようやっと稼いじや暮しを立てている人間だ。いい気になって深酒をしたり宵っぱりをして、からだでもこわすと、たちまち又地下道へ逆もどりしなきゃならねえ。こうやって十四、五人、この大部屋でいっしょに寝泊まりしてりゃ、こいでもまあ仲間だ、お互いに気をつけあって、明日の稼ぎのジャマになるような事はしねえ事だ。ガアガア言わねえで早く寝ようぜ!
上州 へへへ、そら、そういうお説教をガアガアしゃべくって、人の睡眠のジャマしているのは、当のお前だねえかよ。
陸前 おっと、そうかよ!
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と、フトンをひっかぶる気配、周囲の三四人が低く笑う。
それらの声にトンヂャクなく、肥前は酒に酔った調子で口の中でブツクサ言いながら、あがり口で地下足袋をぬぐ。
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