楽の調子や楽器の編成のしかたも、びっくりするくらいに近代的な調子と色彩になる必要があろう。烈しい、混雑した、都会的な多種多様な、不協和な新しい要素が取入れられて現代的なシンフォニイにわたって行きたい。もちろん全体の主題の木びき唄の基調は底流として保持されながらである。
そして、特にこの個所の音楽で、作曲家に充分の働らきを示してほしい。そのためには、この個所の音楽に相当の時間が与えられてよい。
……音楽の流れが、しかし次第に冴え返り、美しく高まって行きはじめる。
その矢先きを意地悪く叩きつぶしてしまうような感じで。
ガラン! ガラン! ガラ、ガラ、ガラ、ガラン! と、ブリキの空きカンのタバを土間の隅に投げ出した響。
[#ここで字下げ終わり]

豊後 やかましいやいっ! 誰だあ、今ごろ、そんな音させやがるのはっ!
陸前 まったくだあっ! ここは、上野から下谷へかけての屋外労働者の合宿所、越後屋簡易旅館だぞっ! しかも、もうトックに睡眠時間になっていて、一同ゴネとるんだっ! 今ごろ雑音立てる奴あ、人権じうりんだぞうっ、ヘゲタレめ!
サツマ (クスクス笑いながら)へへ、屋外労働者の合宿所だって
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