)吹けよ川風、あがれよすだれ、中のオナゴシの顔見たか、と。アハハ、はい今晩わあ、ごきげんさん、と?
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その声とロの音が遠ざかって行く。
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仲蔵 (まだ笑いをふくんだ声で)だけんど博多帯と言うなあ、どんな帯じやろか? 歌にまで唄うてあるんじゃから、よっぽど良か帯じゃろなあ。
五郎 仲しゃんな、まだ博多帯見たことんなかと?
仲蔵 見たことなかとです。
五郎 そんなバカな! うんが鼻の先い、いつでん見えとるのに――
およね 五郎しゃん、言うたらいけん! ホホ、まあ、まあ、こっちいおいでんさい! こっちい、さ!(五郎の両肩を背後から袖で抱いてしまう)
五郎 フフ、なにすっとな、およねしゃん?
およね じつとしてて! じっとしててな!
五郎 ばってん、くさか!
およね まあ、くさかですと? あたしが?
五郎 うん、おなごくさか! プウ……
仲蔵 ハハ、何がどうしたとな? 芸者から抱きつかれて、くさかか? ハハ。
およね くさかろばってん、いつとき、じっとして五郎しゃん。フフ、仲さん、あんたホントに博多帯見たことなかとな?
仲蔵 見たことなか。
お
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