よね そんじゃ、見たかでつしう?
仲蔵 うん、見たか。
およね そんじゃ見せてあげまつす。ばってんが柳腰じゃ、なかとです。腰はちょっとばっかい石うすんごたる。ホホ、はい。

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五郎を手離してスッと立膝になる。
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仲蔵 あん? なんな?
およね (腰のあたりを見せるため両袖を持ちあげた、その袖で顔を蔽うて)……亡くなったお母さんが、あたしにと云うて、たった一つ残してくんしゃったと……そんじゃけん、もう古うなって、くたびれたばってん、ホンモンの筑前しぼり、博多帯。たんとごろうじ。……おお、はずかしか。
仲蔵 (やっと気づいて、強く打たれ)ふーむ、そうかよ! それがそうかよ! なんとまあ、美しいこっかい! さあつきから見ていた。去年来た時もたしかお前しめていた――この美しかもんを、云われるまでは気がつかんとたい……人間なんてなんとまあ……
およね ヒヨッとお母さんば思い出すと、なつかしうて、なつかしうて、すると、この帯のしめとうごとなつとです。親の無い子は軒に立つと云いますけんね。五郎しゃんにも親の無か。そいでも、五郎しゃんな叔母さんのお店ば手
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