待つていれば、そのうち彼奴は戻つて來るんだ」
「早く會わなきやならないワケが有るのよ! バカねえ、あなたは! そんな事、あなたなんぞの御存じなくたつて、いい事だわ!」
「そうですか、ヘヘ!」と佐々があざ笑つて「んなら、そいでいいじやありませんか。ヘヘ! だから、僕は知らんと言つてるんだ」
 ルリは佐々を睨んで、つかみかからんばかりの樣子をしている。なにか滑稽であつた。
「まあ、いいじやないか、そりや」と私は言つた。「どうしても[#「「どうしても」は底本では「どうしても」]會わなければならないのなら、僕からも頼んで、會わしてもらうさ。ねえ佐々君、ハッキリ貴島の所がわかれば、そう出來ない事は無いだろう?」
「ええ、まあ、そりや――」
「だから……いや、それよりも、どうしてそんなに貴島の事――つまり、貴島が君に、全體、どんな事をしたの? それを話してくれないと、僕等にはわからないんだ」
 今度はすこし開き直つてそれを言つた。こんな小娘の相手からいつまでも引きずり※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]されていても仕方が無いという氣持が動いていた。すると、ルリは、急にピタリと默つてしまつた。
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