もハッキリ知らないんですよ」
「ウソ! だつて、さつき貴島さんと連絡すると言つてたじや、ありませんの!」
 チャンと聞いているのだ。
「いや、それは、連絡がとれたら、知らせると言つたんです」
「どつちせ、あなた御存じだわ。そうでしよう? どうして、それをかくそうとなさるの?」
「かくそうとなんかしていませんよ。横濱だつてことは知つているけど、僕も今のところ、それ以上の事は知らないんだ」
「横濱?」
「そうですよ。僕が知らんだけでなく、誰も知らんですよ。人に知られるとヤバイから、あちこち轉々として隱れているらしいから――」
「ヤバイ? ……じや、なんかしたんですの、惡いこと?」
「ううん、いや、そんなわけじや無いけど、その、仲間のチョットしたゴタゴタで、とにかく、當分出て來ない方がいいから――」
「一體、どんな仕事しているんですの?」
「知りません僕あ。……でも、あなたは、どうしてそんなに貴島に會いたがるんです?」
「あなたに關係の有ることじや無いわよ! それよりも、どうしてあなたは、あの人に私を會わせまいとなさるの?」
「ヘヘ、誰も會わせまいとなんかしていないじやありませんか? 第一、
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