肌のようにスベスベした皮膚が、以前は白く乾いて、不透明だつたのが、シットリと濡れたようになり、内側から血が差して、それが微かにすけて見える。貴重な種のバラの花のクリーム色の花瓣でも見ているようだ。それに眼だ。どこがどうと説明はできないが、まるで、ちがつてしまつた。人を眞正面からヒタと見てたじろがない視線はそのままだが、黒目にツヤを帶びて直ぐにも泣き出しそうな、せつないような色を浮べて、強く光つている。あとは、どこがどうなつたのか、よくわからない。着ているのが、男の着るような紺がすりの防空服であるのが、かえつて效果的で、ゴツゴツ黒い布にすぐれた白磁の壺を包んだように、さえざえと目立つのである。先程から、わきに立つた佐々兼武もビックリしたように眼を据えてルリの顏ばかり見守つていた。
15[#「15」は縦中横]
「どうなすつて、センセ? 顏ばかりごらんなつて? なんか附いてる?」そう言つてルリは片手で自分の頬をツルリと撫でた。
「いや……君の姉さんの御主人だつて言う人、――小松さんか――こないだ僕んとこに來たよ」
「へえ? 義兄《にい》さんが? どうしてかしら?」
「どう
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