私のような作家の惡習慣のようなものかもわからないのだ。――そんな氣がしながら佐々のおしやべりを聞いていたが、一方でこの三人の青年が互いに「偶然に吹き寄せられたから當分いつしよに居るだけだ」と言つたふうに、こうしてサバサバといつしよに暮していながら、自分たちでも氣が附かない所でむすばれている姿が、なにか私にうらやましいような氣がした。私にも私の周圍にも、青春のそのような空氣が、かつて有つた。今はもう無い。あれは一體、いつ頃、どこへ行つてしまつたろう?……
 飯がたけ、久保が歸つて來て、かんたんな食事がはじまつた。久保は、ほとんど口をきかないで食う。佐々と私の二人分よりもよけいに食つたろう。私は二人に向つて、貴島に會つたら、とにかく一度私の所に來るように言つてくれるように頼んだ。「ええ。一兩日中に僕が會いますから、そう言つときます。でも、ここ四五日は奴さん、出歩けないかもしれませんよ」と佐々が言つた。「どうして? その藥の件で?」「それもあるでしようが、ほかにも何かあるようでしたね」
 食事がすみ、私が辭し去ろうとすると、佐々も出かけるので途中までいつしよに行くと言う。久保は今日一日寢るら
前へ 次へ
全388ページ中89ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング