ドロドロになつた兵士同志が話し合つている光景だと思つて見た。そう言えば、佐々と久保、それから貴島も實際の上で戰友だつたと言う。何かハッとした。「そうだ!」と思つた。何がそうなのか、私にもわからなかつた。胸の底がシーンとなつて、何かが、そこから吹き上げて來るのを感じた。
氣が附いて見ると、入口の階段の所が薄明るくなつて來ていた。やがて夜が明けるのだろう。二人の議論はまだ續いていた。
14[#「14」は縦中横]
その次ぎの日に、私は綿貫ルリに逢つた。
それもアッケない事に、防空壕での一夜の歸り途に、しかも彼女自身の方からノコノコと私の前に姿を現わしたのである――
次ぎの朝――と言つても、はげしい議論の後で、久保も佐々も、それに私も、さすがに疲れてわずかの間トロトロとしただけだと思つたのが、實は數時間眠つたらしく、今度三人が前後して目をさました時は、すでに陽が高く昇つていた。ムックリ起きだした佐々が、いきなり壕舍の天窓と入口の戸を開け放ち、私と久保を外に追い出して、掃除をはじめる。それをすましてしまうと、自分も外に出て來て、サルマタひとつの素裸かになつて、號令を
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