いらしい。つまり現在非常にたくさん居る二十代の、言わば「電撃的」に共産主義者になつた新らしいタイプにぞくする一人である。だから、主義を信ずることは非常に強い。ドンドシ實行に移して行く。彈壓の中で鬱屈した經驗が無いから、明るい。しかし又それだけに、ほとんど私などには理解できない位に單純な所があるようだ。抱いている共産主義理論そのものも、あちこちとスキだらけで、自分では共産主義的にものを言つたり行動したりしていると信じてやつている事が、實は全く封建的な專制的な事であることがあつたりする。彼自身はそれに全く氣が附いていない。そこいらが、「特攻隊」に非常に似ている。眞劍で正直で命がけな所も特攻隊にソックリである。だから、往々にして、ハタから見ていると滑稽なことがある。しかし、そういう場合も、當人が正直に全身的にやつている事がわかるし、又、机の上の空論から出發しているのでは無いから、惡い感じはしない。その輕佻さに苦笑することは出來ても、輕蔑することは出來ないのである。特にこの佐々兼武はそれらの中でも優秀な男らしい。私は、うれしいような悲しいような氣持で、彼の素朴きわまる、しかし熱情的な議論を聞い
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