貴島君と、どんな關係の人?」
「さあ。別に大して立ち入つたなん[#「なん」に傍点]じや無いんでしよう。ほかにもまだ居るようですよ、あんなふうに貴島を追いかけてる女が」
13[#「13」は縦中横]
それから久保正三は火をおこして、茶を入れてくれた。
室の入口のところにコンロが置いてあつて、細かく割つたタキ木や、水の入つたヤカンなども、そろえてある。男だけの暮しとしては意外な位にすべてがキチンと整備されていることが、だんだんわかつて來た。それが、全部この久保の仕事らしい。手順よく、ユックリ手足を動かして茶を入れおわつた時には、それに使つた道具がチャンと元の通りに片づいているという風である。
特に私を歡待するためにしているのでは無い。食事をしながらも、私に食えとも言わなかつたし、そんな事は思いつきもしないらしい。茶も自分が飮みたいから入れたが、そばに人が居たから一杯ついであげると言つた調子だ。無禮なことや、傲慢そうな表情など一つもしないが、何か氣が遠くなるほど無關心である。默つて相對していると次第に、こちらが無限の距離に押し離され輕蔑され切つているような氣がして來る
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