あいつの言うことは、あんまり當てにはなりませんね」
「今夜、佐々君と言うのと横濱へ行く用事と言うのは、よつぽど大事な用かな?」
「なあに、大事と言うわけでも無いだろうけど、横濱の港外の、海の上で向うの船と出會うんですからね、決めた時間にキッチリ行かないといけないんじやないですかね」
「どう言うんだろう、それ――?」
「向うの船が、藥の入つた箱を海ん中へほうり込むんだそうです。それを發動機船で行つて受取る。貴島の親分の黒田の仕事なんでしよう。受渡しの現場を見せに、いつしよに連れて行け連れて行けと、ずいぶん前から佐々が攻めるように貴島に頼んでいましたから。なんだか、G雜誌にそのことをスッパ拔いてやるんだつて佐々が言つてた」
「だけど、貴島君がよくそれを連れて行くねえ? 黒田と言うつまり自分の親分の仕事を雜誌にスッパ拔くための人間をいつしよに連れて行くなんて、妙じやないかな?」
「なに、あいつは黒田なんて男を別に好いちやいませんよ。それに貴島にとつちや黒田の仕事なんて、ホントはどうだつていいんですよ。佐々がスッパ拔こうが拔くまいが、どうだつていいんじやないですかね。どつちせ、そんな事みんな、
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