鑛爐でガンガンやつてたけど、ちかごろじや、たまに鐡だと思やあ、火に燒けたボロボロの屑だもん。たいがいアルミかなんか煮て、釜やなんぞ作るんだ。まるで、ママゴトでさあ」
「どこ、工場は?」
「十條です。もとは職工が三百人から居た所だけど、今じや五十人とチョット。ここんとこ、そのママゴト仕事もすくなくなつて來てね、カマは火を引くし、給料は拂わんし、心あたりの有る者は、ほかへ行つてくれと言つてるんですよ」
「爭議になつているんだね、そいで?」
「ええ。……だけど、景氣の良い時のナニとは違うんでねえ。會社もホントにやつて行けないらしいや」
「そいで、どんな工合なの?」
「ダメだなあ。どつちにも、なんにも無いのに、ムシリ合いをしてんだもの。乞食の喧嘩みたいなもんですね。左翼の連中がやつて來ちや經營管理をやれなんてアジつてるけど」
「佐々君と言うのは、そいで行つてるんだね?」
「まあそうでしようねえ。本部との連絡係みたいな事をしてるようです」
「君も共産主義?」
「いいえ」
「すると共産主義に反對?」
「いやあ。僕あまだ、そういつた事はわからんです」
「……貴島君は今夜、もどつて來るだろうか?」

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