げんそうに私を見るのが別にシラを切つているようでは無い。「どうかしたんでしようか?」
「いや、あれきり行方不明になつてしまつたそうでね」つとめて何氣なく言いながら私は相手の表情の動きに注視していた。貴島はただ輕く驚いたような眼色をしただけで、なんの動搖も示さない。
「そりや………」
「で、家の人が僕んとこへ來たんでね、あの晩のこともあるし君に聞けば何かわかるかもしれんと思つたんでね」
「そうですか。いいえ、僕あ知りませんねえ。ただ送つてつてあげただけで。……でも、なんじやないでしようか、あの時劇團にもどりたくないとしきりと言つていたんですから、つまり、ザコネですか…それがイヤで、ホンのどつか友達の家にでも一日二日行つてると言う事じやないでしようか?」
「僕もそれは考えたが、そうでも無いような所もあるし――」
「あんなシッカリした人なんですから、なんかあつたとしてもそれほど心配なことは無いと思いますけどねえ」
「そうも思えるけど僕にもすこし責任と言つたような事もあるような氣がするしね」
「そう言えば送つて行つた僕にもあります、……なんでしたら僕も手傳つて搜しましようか?」
私は、あらた
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