千葉縣の海岸に來たのです。
あれから二三日して、タミ子が、どういうわけからか、「海へ行く、海へ行く」と言つてきかないのです。理由も原因も全くわかりません。たずねても答えないのです。
「どこの海へ行くの?」と聞くと、
「九十九里」と言います。以前に來た事があるか何かで、その時の記憶で言つているのらしい。しかたが無いので、三人で出かけました。必要な金はルリが出してくれました。
しかし、こうして此處に來てみると、來てよかつたと言う氣がしました。土地はただ何のヘンテツも無い、一直線の濱邊に、土用波が、むやみと大きな音を立てて打ち寄せ打ち寄せしているだけ。小さなさびれ果てた村の汚い宿屋に泊つて今日で二日ですが、あたりのすべての思い切つた單調さと、一分間も休みなくゴーゴーと濱邊をゆすつて鳴りわたる波の姿などが、變なふうに、僕ら三人にピッタリするんです。この波の力強い音と動搖から、のがれる事は絶對にできない。一瞬だつて、そこから逃げ出すことはできない。しかも、何か細かい事を小さい聲で言つたりしても、波の音にかき消されてしまつて、聞こえはしない。人が叫んでも波の音は、それごと呑みこんでしまう。人間
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