、僕はおぼえています。僕はあの表情を忘れない。………氣が附くと、立つているのに耐えきれなくなつたか、ルリは坂道の端にしやがんでしまつている。それを、僕はまだ叩きつけていました。タミ子は、びつくりしてしまつて、口をポカンと開けて立つたまま見ていました。
 そして、そうして、ルリをなぐりつけている最中に、僕は、自分がルリを愛していることを知つたのです。愛していると言うよりも、惚れていると言うのがピッタリする。自分が惚れているのは、ホントはルリである。それはズット前からそうだつたのだ。それが、今まで自分にもわからなかつた。
 俺が愛しているのはルリであつて、タミ子なんかでは無いのだ。バカ! バカ! バカ!
 ……僕は手が痛くなり、なぐるのをやめました。ルリは、氣が拔けてしまつたようにグタリとしやがんで、僕の足元を見ています。タミ子は、ちぎれ飛んだルリの服のボタンを地面から拾つているのです。僕はなんにも考えられませんでした。ただ、そのタミ子と、ルリの顏に眼をさらしているきり。ルリの顏は、僕からなぐられた頬あたりは見る見るうちにクッキリと手の平の形に紅く血がさし、僕の手の當らなかつたアゴや額など
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