あるのです。商賣で癖になつた媚態らしいですが、しかし、そういう商賣をして來た女の、變な慾望――カラダだけの感ずる慾望もあるのではないかと思います。僕はそれを見て二度ばかり泣き出してしまいました。ホントにナサケ無かつたのです。
Mさんの手紙の事をたずねても、なんにも憶えていないようです。いつ誰からもらつたのと聞いても思い出せないらしい。書いてある意味もわからない。ただその紙だけを非常に大切にしているのです。戰爭中、特に終戰近くの事など完全に忘れていて、どこで何をしていたと聞いても、その時々で言うことが違います。
その日は、僕が買つて行つたイモやコッペパンなどを、うまそうに食べてしまうと、タミ子が外に出ようと言うので、しかたなく僕も一緒に出かけました。たいがい、そういう時には公園の中をアチコチうろついたり、時によつて驛の構内へ行つて立つていたりするんですが、ウッカリすると例の横穴の方へ行くんです。アサマしい氣がして、一人で出すわけには行きません。僕はナサケ無い氣持で、スタスタ歩いて行く女の四五歩あとから、公園の坂道を登つて行きました。良い天氣で、カッと日の光です。動物園にでも行くのか、
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