て生ま白い皮膚の、むしろ平凡すぎるような中高かの顏。髮も普通の洋髮にまとめている。もちろん、僕には見おぼえは無かつた。……それでいて「ああ、この人だ」と思つたのだ。どう言うわけだろう? 古賀さんの話や、Mさんの書き物から受けた暗示が僕に作用したのか? それとも、匂い?……いやいや、匂いと言えば、その穴の中のゴミ捨て場のような臭いだけで、それ以外には無い。わきに立つている古賀さんからは、中年女のヒナタくさいみたいな匂いと、徴かなクレゾールの匂いがするだけ。だから匂いのためなんかでは無い。だのに、なぜその瞬間に、あんな強い確信みたいなものが僕の中に生れたのか? わからぬ。そして今となつては、その確信もあやしくなつて來ている。
「またこんな所に來てんのね?……どう言うの? さ、歸ろう歸ろう」
 言われて、その女は逆光のために眼をすこししわめて此方を見ていたが、直ぐに古賀さんを認め
「ああ、古賀先生……」と言つて、すこし恥かしそうにニッと笑つて、頭をさげた。その動作がグナリとして、身體全體がひどく軟かい――と言うより、骨が無いような感じ。あるいは、衰弱しているセイかとも思う。それ以外に別に異状
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