屋の建物の横で。外からイキナリ、はき物のままで入つて行ける廊下を入つて、四五間歩いた左側の、それでもドア式になつた戸を開けると、三疊――いや二疊位の部屋――あれが部屋と言えるか。なにか動物の巣。動物と言つても大きな、物恐ろしいやつでは無く、たより無く小さい。そうだ、蜜蜂か何かの巣穴。そんな感じです。二尺四方位の窓が一つ、疊のかわりにウスベリが敷いてあつて、片隅に粗末な小机が一つ。あと何も無い。こんな室が、この建物の中に二十ぐらい有るらしい。後でわかつたのですが、ルリの住んでいるアパートと言うのが、やつぱり此の式のもので、しかも、此の家から、いくらも離れていないうぐいす谷に有つたのには驚ろきました。
「タミさん、居る?」と言つて古賀さんが戸を開けた時には、病氣だと聞かされていたのだし、いきなりその人が、そこに寢ているのを鼻の先きに見さされるのかと想像して、僕はオビエたような氣持になつたが、想像ははずれて、部屋は空つぽで誰も居ない。「なんだ、又行つてる」と言つて古賀さんはズカズカあがつて、小机の引き出しから、手アカでよごれた一枚の原稿紙(半ペラ)を取り出して、サッと目を通して、默つて僕に渡
前へ
次へ
全388ページ中362ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング