ガラガラとしやべる。「趣味でね、あたしの。あすこいらの界隈の女たちの、めんどうを時々見てあげる。醫者だからね、こいでも。タミさんの手當てを一二度してあげたことがあるんだ。そんでね、たしかに、そうじやないかと、そんな氣がしたもんだから。景子さんから話を聞いて、聞いているうちは思い出さなかつたけど、後でヒョッとそうじやないかと思つたんだ。妙な手紙持つているんでね、その子がさ」
路はだんだん上野公園の裏の方へ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りこんで行く。そのうちに、言葉を止めてヒョイと立ち停つて僕をジロリと見てから、
「チョット聞いておくけどね、貴島さん!」と改たまつた調子なので、「はあ」と僕が言うと、今度はしばらく默つていてから
「ずいぶん、ひどい事になつていますよ」
「その人がよ。かまわない? ……こんな時代。弱い女一人が生きて行くにや、いろんな事がある。わかるわね?」
「……ええ」
「一番惡いことを、考えて置いてほしい。……私たちに、今、こんな中で、どんな人でも批難できやしないだろ? みんな、人間だ。……人間は、みんな弱いんだよ。わかるわね?」
「わかります」
古賀さんは
前へ
次へ
全388ページ中360ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング