んから――」と言いはじめると、
「ああ、あなたなの!」と、ジロジロと僕を見ていましたが、不意にニタニタ笑い出し「そうか。そいで……タミさんに、直ぐに逢つて見る?」
「……タミさんと言いますと?」
「あ、そうか。名前も知らないんだつけ。フフフ」
 どうも樣子が、景子さんが何もかも、しやべつてしまつたらしいのです。僕は眞つ赤になりました。
「いいさ、いいさ。所も知らず、名も知らず、か。いいさ。いいじやないのよ。ハッハハ。直ぐに行つて見る?」
 僕がモジモジしていると、一人でのみこんであがれとも言わず、そのままクツを突つかけて下へおり、ガラガラピシャンと表戸をしめて、先きに立つてドンドン歩き出すのです。
「タミさんと言うのよ。ホントの名は私も知らない。自分でそう言うんで、みんなそう言つてる。いえね、あなたの話を景子君から聞いてね、なんだかトテモ感心しちやつてね。いえ、感心と言うと變だけどさ、フフ、だつて、いまどき、そんな時のナニを搜して歩くなんて、なんだかトテモうれしくなつちやつてね。ハッハハ、これ、オールドミスのセンチメンタリズムだね。まあ、なんでもいいや」古賀さんは歩きながら、大きな聲で
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