と言うのです。例の樂屋での話です。僕がめんくらつていると、彼女は急に聲を落して
「あんたの、その人が居たわよ!」
僕は何の事だか、しばらくのみこめませんでした。
「いえ、果して、そうだかどうだか、あんたが逢つて見ないじや、わからないけどさ、古賀さんは、たしかにそうだと言うの。だつて、その人はMさんの手紙を持つていて、その中に、あんたの名前が書いてあると言うんだもの。とにかく、何でもいいから、今すぐ古賀さんとこへ行つてごらんなさい。ホントは私も一緒に行きたいけど、舞臺があるから今日は行けない。いえ、古賀さんには私からよく話してあるから、行けば、わかるから。ガラガラした人だけど、根はとても善い人だから。そいで、その人と逢つた結果はすぐに私にも知らせるのよ。よくつて?」
何か聞き返している暇も無く、押し出されるようにして、僕は日暮里へ行きました。燒跡の小さいバラックに、醫院のカンバンが出ているので、すぐわかりました。古賀さんは、四十かつこうの獨身の女醫。しかし人柄は女醫と言うよりもアネゴと言つた感じの、亂暴な位に率直な、白い上衣にズボンをはいて出て來て、僕が「貴島と言いまして、立川景子さ
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