が出來なくなりました。そして山梨を逃げ出したのです。ルリにはもちろん、久子さんにも默つて、僕は東京へ來てしまいました。
ルリがその後どうしたのか、その次ぎに上野で逢うまで、僕は知りませんでした。
42[#「42」は縦中横]
そんなわけで、僕が東京に出て間も無く立川景子さんの所を訪ねて行つたのも、かくべつの目的が有つたからではありませんでした。あの女を搜す氣持は、もうほとんど失つてしまつていたのですから。ただ久しぶりに何となく景子さんに會つて見たくなつただけです。ですから、そこでいきなり、ムヤミと昂奮している景子さんを見出し、それから景子さんからせき立てられて、キツネにつままれているよう氣持で古賀幸尾と言う男のような名前の――いえ、名前だけで無く性質もまるで男のような女醫さんに會うことになつて、そしてその結果、實にアッケ無い位にカンタンに、あの女を見つけ出すことが出來たのにも、ただグルグルと眼がまわるような氣しただけで、今から思つて、その前後のことがハッキリ思い出せないような氣がするのです。
僕の顏を見ると景子さんが、いきなり
「なぜ、もつと早く來なかつた!」
前へ
次へ
全388ページ中357ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング