ケイだと思います。しかし僕は不滿は感じていません。

        40[#「40」は縦中横]

 貴島勉の手紙(――この前のものから、この手紙に至る間の五通省略)
          ○
 ――
 三好さん
 またまた、永くごぶさたしました。
 いろんな事がありまして、あちこち走りまわつていましたので、やつと、すこし落ちつきました。いや、もしかすると、これでホントに落ちつくことになるかも知れません。いやいや、僕みたいな[#「僕みたいな」は底本では「僕みたい」]者は、又、いつ、どんなキッカケでウロウロと迷い出すかわからない。そうは思つています。その時はその時で、しかたが無い。そうは思つています。しかし、それにしても、現在は、なんだか、ブカブカと流れただようていた舟の上から、ドブンと水の中にイカリを投げおろした――そんな氣持なんです。知らぬ間に舟は一箇所に浮ぶようになるかもしれない……
 舟と言えば、僕は今これを、妙な所で書いています。千葉縣の海ぞいの宿屋です。猛烈な波の音で家がブルブルふるえます。べつに暴風では無いのです。ここの海岸に打ち寄せる波は、今頃(土用波と言うそうですが)の季
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