そうすると、僕はどうすればいいのだ?
 フッと、一本杉が、その時の別れぎわに言つた「いつか、兄きを追つかけていた、ルリさんとか言つた綺麗な女ね、あれが、その後、二度も三度も、兄きのことをたずねに組の方へ來ましたぜ。一度は、例のホラ、丸まつちい身體の久保さんねえ、あの人と一緒だつたつけ」と言つたのです。その時は唯聞き流していたんですが、今こうして、前途の目標を失つてしまつて、ボンヤリ寢ころがりながら、それを思い出すと、不意にクラクラッとする位に、逢いたくなつたのです。久保とルリ。あの丸い、土佐犬のように默々とした久保。それから白く匂うルリ。なつかしい。逢いたい。……僕は無意識に寢どこの上に起き直りました。
 ……しかし逢つてどうしようと言うのだろう? 久保は僕とは違う。僕は久保と同じようには歩いて行けない。そしてルリは――ルリの事は、まだ何かしら僕には怖いのです。それに、今度ルリに逢うと、トタンに、ルリと僕との間に、何か非常によくない事が起きそうに思われるんです。いけない! 逢つてはいけない!
 そうして僕は再び寢ころがつたのです。その瞬間に山梨の山内久子のことをフッと思い浮べました
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