らなつかしそうにして、その後の話をユックリしたいらしかつたのですが、とにかく身をかくしている事になつている私をつかまえて人目の多い場所で、あまり長話しをしてはならない事は、さすがにその世界の常識で承知していますので、ホンの四五分間の立ち話で別れたんですが、その短かい話から推測すると、あの後、私が消えたので黒田組と國友たちの連中との間の紛爭は割に平穩になつていたが、それとは別に當局の暴力團體取りしまりが嚴しくなつて、現に黒田策太郎は檢擧されて今裁判中、國友大助は危險を感じたか、あの世界から全く姿をくらまして行方わからず。黒田組は、組の名を解消して、子分の連中は目下おとなしく土建屋になつたり荷役の仕事をしているが、しかし裏では相變らず昔と同じ。「あたしも、まあ、その方で働らいています。兄きも、もうホトボリはさめちまつたんだから、又戻つて來ちや、どうですかねえ。親父さんにや、あたしから言つときます」と杉田は言いました。僕は、ただウンウンと話を聞くだけで別れたのです。……そんなわけで、組へ戻ろうと思えば、なんの苦もなく戻れる。戻ろうか?……考えたんですが、どうしてもそんな氣にはなれないのです。
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