の前身のため、藝能關係の客が附いていて、店は相當繁盛している。それよりもビックリしたのは、以前、黒田組に居た頃、組の若い者につれられて、この家には自分は一二度來たことがあるのだ。記憶は無いが、その時春子をも見た筈。その時は、たしか組の若い者が「禁制品であろうと何であろうと、どんな料理でも酒でも、スシなんかも食わせる家が有るから案内しようじやありませんか」と言つて連れて行き、言葉の通り、當時としては珍らしい物を飮み食いさせてくれた。現在でも、そういう點は同じらしい。
訪ねて行くと、夕方だつたが、もう店は開けていて、客はまだ立てこんでいず、Mさんの名を言うと、たちまち、なつかしそうな顏で、まあまあこちらでと言つて、隅の小さなテーブルの所へ連れて行き、他の客にするのと同じようにビールを出してくれる。ガラガラとした調子だが、見るからに人が良さそうで、美しいと言うよりも色つぽい。氣取らず、オシャベリで、こちらが默つていても、あれこれと氣輕に話してくれる。はじめはMさんの思い出話が主だつたが、次ぎ次ぎと話題が流れて、この間に身の上話なども混る。それによると、夫も子供も有るようで、ただ夫が病身のた
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