ですか……どうして又、いくら芝居をするためとは言いながら、原子爆彈の落ちる十日ばかり前なんかに、選りに選つて廣島なぞにいらしつたんですかねえ。あの方の事を思うと、今でも泣けて來るんですの」と言いながらサメザメと涙を流す。
その言葉つきや涙の顏などが實に綺麗で、まるで芝居でも見ているよう。全體がどうも美しすぎる。言葉も動作も。自分はそれを見ながら、これまでに訪ねて行つた數人の女たちがMさんの事を語る語り方が、それぞれに違つていたのを思い出していた。特に前の椎名安子のそれと、山内久子のイハイの事、それから立川景子の悲しみ方などを、この志村小夜子の涙と心の中で較べていた。椎名安子は、自分には少し怖い。近よりにくい。立川景子は、なにか誇張して、別に惡い意味では無く行き過ぎているような氣がする。山内久子はイハイを見ていても、泣いたりはしなかつた。ただ默つて、深い強い目色をしていただけ。……そんなふうに思つていたら、どういうわけか急に、もう一度、山梨縣の久子の家に行つて見たいような氣がした。……ところで、この志村小夜子のこの美しい涙は、すると、どう言えばよいのだろう? たしかにそれは悲しみの涙で
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