業の新興事業家だつた。ただ他の成金とちがうのは、戰爭以前から――財閥に深い關係を持つていた實業家、言わば名家の次男であつて、戰後財閥解體のアホリを食つて、ほとんど無一物になつたが、――財閥關係の人的關係のつながりは依然として殘つていて、金融方面ではそれがなかなか物を言う。そのような關係をうまく利用して土建會社を起して成功し、今ではその會社の會長で、他にも二三の會社に關係している。戰爭中、まだ小夜子が女優をやつていた時に、そのパトロンだつたが、終戰直後、妻を失い、間も無く、正式に小夜子を後妻として迎えた。先妻の子が二人いるが、二人とも既に大きく、別棟の家に別居の形。小夜子には、まだ子供無し。生活は豐かで、小型の自家用車を乘りまわし、月に二三度は外國人などを招いてダンス・パーティを開く由。立派なブルジョアの生活。しかし、すべてに夫妻の趣味の良さが行き渡つていて、成金式のゲスな所は無く、小夜子は非常に滿足しており、幸福に見える。顏も姿もサエザエと美しい。
――一時間ばかり會つて話している間に、自分が總合したのは以上のような事であつた。Mさんの事を言うと、「ホントにねえ、なんと申したらいいん
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