でいる。
 椎名安子からこの女の現住所を聞いて訪ねて行つたが、その番地へ行つても、家がしばらくわからなかつたが、そのうち氣が附くと、なんの事だ、自分が何度もその家の前を通り過ぎた。今どきでは豪壯と言つてもよいような立派な邸宅が、それだつた。志村某々と、小夜子の夫のだろう表札が出ていて、明らかに終戰後に新築したものである。なんのわけも無いのに自分はそんな立派な家に住んでいる人だとは思つていなかつた。なにか意外なような氣がしてしかたが無かつた。どうもこれは、今迄自分が訪ねて行つた女たちが全部と言つてよい位に貧しくつつましい生活をしていたのが、いつの間にか、あとも全部似たような人たちだろうと思うようになつていたためか。
 訪れると小夜子は内にいて、快く會つてくれた。家の内部も豪華なもので、小夜子も金のかかつたナリをしている。家の樣子を見たばかりで、どうせ今どきこんな立派な邸宅に住んでいるのは、新興成金かなにかだろうと自分は思つていたが、それにしては、そこいらの好みがアカぬけしていて下卑たケバケバしい所が無い。これも少し意外だつた。もつとも、後で聞いたところによると、小夜子の夫は、やつぱり土建
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