き合いになるかと見えたが、相手の百姓が僕に目をつけ、僕のことを何と思つたか、急に語調を低めたが、やがて捨ゼリフのような罵言を吐きちらしながら、立ち去つて行つた。あと、久子は氣が立つままにブツブツ何か言いながら鍬を片づけたり、手足を洗つたりして、僕のことなど無視していたが、やがて、老婆が「この衆がお前の所へ來てな――」と言うと、やつとこつちを向いてくれた。でもムッとしてどなたとも言わない。僕は、困つたが、しかた無く、Mさんの名を言う。するとヤットいくらか打ちとけてくれ、上にあげてくれる。既にトップリと日が暮れて、屋内は眞暗になつているが、電燈は無し、ランプもつけない。久子は、眼をさまして、まつわり附いて來る幼兒を叱り叱り、バタバタと夕食の仕度をするし、僕は、ボンヤリと暗い中に坐つているきり。やがて夕飯になり、「ホート」と言うスイトンのような汁を僕にもくれた。それがすんで、「どんな用です?」と問われたが、この女が僕の搜している女で無い事は、それまでにわかり過ぎる程わかつているのだし、返事に困つたが、又例のMの事を書くためウンヌンを言い、立川景子さんに聞いて訪ねて來たことを述べる。疑われるか
前へ 次へ
全388ページ中320ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング