の開拓村で働らいた經驗が有つたから、まあ、やれるんですよ。とにかく、村の人に憎まれるワケが、こつちにもあるんですよ。私は、これで、ゴーツク張りですからね」
 久子はその晩、イロリのそばで、僕にそう話して、カラカラと笑つた。
 しかし、その夕方、中年百姓を相手に口ぎたなく罵り合つている彼女の形相は、ただ淺ましく動物的なだけで、右の彼女の内心など微塵も現わしているものではなかつた。この女は、いつでもそうなのだ。心の中には、それだけ廣やかな反省やフックリした感情を持ちながら、いつたん他の人と爭つたり――いや、他の人と爭つたりする時とは限らない、生活のあらゆる部面で現實的に行動する時は常に――たとえば畑で働らいている働きぶりから、家で食事をする時のメシの食い方まで、動物的でガツガツして、なにかしら野卑だ。――僕には、感覺的に附いて行けない。何か、動物のメスを見ているようで、本能的にイヤな氣持になる。……それが、こうして又此處に舞いもどつて來て、この女のそばで百姓の手傳いをしているんだから皮肉だけれど、しかし、現在でも、彼女のそういう點は好きになれない。――
 口喧嘩は三十分ぐらい續き、一時は叩
前へ 次へ
全388ページ中319ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング