と不安だつたが、案外に直ぐに信じてくれ、それに意外なことに、僕がMさんの事を話しているうちに、それまで何も言わなかつた老婆が急にあたたかい聲で、「ああ、廣島でなくなられたと言う人の、お弟子さんでやしたかい!」と言つてくれた事だ。僕が變な顏をしていると、イロリの火の光の中で、はじめてニッコリした久子が、默つて、火のついた枝を鍋の下から取り、壁のそばへ僕をつれて行き、よごれた佛壇を見せてくれた。
 そこに並んだイハイの間に、Mさんの寫眞――それも映畫雜誌からでも切り拔いたらしい小さな寫眞が、かざつてある。
「……あたしの昔の先生だと言つたら、あれからズーッとおつ母さんも朝晩に水をそなえてくれたり、花をあげてくれているんですよ」
 僕は一種なんとも言えない清冽なものを感じ、しばらくそのMさんの寫眞を見つめていた。
 それから後は非常に調子が良くなつた。と言つても、かくべつの話は無い。Mさんの事を話したり、立川景子について話したり(想像の通り、久子は景子には戰爭以來逢つていないと言う)この山内家の事情を聞かされたりした。かくべつ僕を歡迎すると言う風は無し、その方法も無いような貧しい家で、久子の
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