が、なかなかわからぬ。部落はずれの、その家に近くなつて、四五人の農夫やおかみさんにたずねても、テキパキと答えてくれる人は無い。中には、「山内」と言つただけでフン! と言つて向うを向いてしまう者がある。子供だけが割にスラスラと答えてくれる。おそろしく人氣の惡い村だと思つた。……しかし、それは自分の思いちがいで、實は山内久子の一家が、多くの村の人たちから反感を持たれているためである事が、後になつてわかつた。
 ようやく、その家が見つかつた時は、すでに夕ぐれに近く、戸外は夕陽の光でまだ明るいが、屋内は暗くなつている。家と言つたが、普通の農家の構えでは無く、物置にすこし手を入れたような狹い、ペチャンコの小屋で、おそろしくきたない。小屋の前に穀物を乾したりする庭場の空地が取つてあるので、百姓家だとわかる程度。表戸口は開け放してあるので、案内を乞うたが、誰も出て來ず、答えも無い。一家中で畑にでも出ていて留守かと思つたので待つ氣になつていると、屋内で人の氣配がして、幼兒の聲らしいものがした。すかして見たが暗くてよく見えない。その内に、モゾリと動き出した物があるので、よく見ると、一間きりの部屋の、火の
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