の村の名を言つて道筋をたずねると、一里とチョットだと言うし、そこを通るバスも有るには有るが、それが出るまで二時間近く待たなければならぬと言うので、ブラブラ歩いて行くことにしました。町を出はずれると、田や畑の中を行きます。土地は丘陵型の起伏に富み、水田もあるにはあるが、畑が多い。それもたいがいスロープになつている。その間を縫つて行く道も、たいがい、ゆるやかな登り坂か降り坂になつていて、水平な所を歩くことは、ほとんど無し。その丘陵型が次第に疊みこまれて行く先きは山脈に盛りあがつている。
歩きながら、自分が戰地から歸つて以來、今まで、こんなような農村に踏み入つた事が一度も無かつたことに氣づく。かくべつの感慨は起きなかつたが、でも山や森や田畑や、その間にポツポツと立つている農家などを見ると、急に眼がさめて、はじめて自然を見るような新らしい氣持がして、セイセイする。同時に、身體のどこかがポーッとかすんで來て、氣が遠くなるような感じもした。
教えてもらつた通りに歩いて行つたが、一里とチョットと言うのが、遠いのに驚く。實際は二里ぐらいはあるか。やつと、その部落に着き、方々で「山内久子」とたずねた
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